役立つヒント集

小泉弁護士 > 役立つヒント集 > 【建物賃貸借】建物譲渡に伴う前所有者・旧所有者が有する未払賃料請求権の帰属と解除の可否

【建物賃貸借】建物譲渡に伴う前所有者・旧所有者が有する未払賃料請求権の帰属と解除の可否

契約上の地位の移転と賃料債権の帰属について

  • 契約上の地位の移転後の賃料債権

建物の譲渡に伴い建物賃貸借契約の賃貸人たる地位が移転する場合、譲渡後に生じる賃料請求権は、新所有者に帰属します。

  • 契約上の地位の移転前の賃料債権

他方で、譲渡前に発生していた賃料債権は、建物の所有権移転では当然には承継されず、前所有者(旧所有者)に留まります。

譲渡前の賃料債権を新所有者に移転する場合には、別途、債権譲渡及び債務者への通知が必要となります(民法467条1項)。


  • 建物賃貸借契約の解除の可否について

滞納家賃がある状態で、建物を引き継いだ場合、新所有者が承継した建物賃貸借契約滞納につき、滞納を理由に解除できるについてですが、争いがあるようです。
少なくとも、建物所有者の手元に、請求できる賃料がなければ、催告して、建物賃貸借契約解除が出来ません。
このため、建物所有権の移転のみならず、上記債権譲渡手続も執ったうえで、滞納状態にある賃料債権も譲り受けることが必要になると考えます。


裁判例としては、東京高等裁判所昭和33年11月29日判決があります。

この裁判例は、
「新所有者人は譲り受けた延滞賃料債権ばかりではなく、新所有者が賃貸人となつた後の延滞賃料債権(引続き合計十五ケ月分)をも合せて請求しているのであるから、契約解除の前提としての催告としてはもちろん、その延滞賃料を上記認定の相当期間内に支払わないことを条件としての契約解除の意思表示もまた有効といわなければならない。」と記載しており、解除を認める際して、単に譲り受けた債権のみならず、新所有者が賃貸人となった後の延滞賃料債権の滞納にも触れている点に注意が必要です。


  • 対応

    確実性を求めるのであれば、建物譲渡決済前に、前所有者に契約の解除通知を送ってもらい、占有権原がない状態で、所有権を引き継ぐような対応が考えられます。

監修者:弁護士小泉英之

まずはご相談・お問い合わせください