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死因贈与契約(民法554条)によって預金債権を贈与すべきではない理由

死因贈与契約は、贈与者と受贈者との間で、贈与者がある財産を無償で受贈者に与えること、及び贈与者が死亡によってその効力が生ずることを約する契約になります。

遺言と異なり、有効になるための様式が決まっていなかったり、公証役場で公正証書を作成する必要がなかったりと、手続が簡便で利点も多く、利用が検討されます。

しかしながら、対象の財産によっては、思わぬ落とし穴がありますので、利用する際には注意が必要です。

金融機関に対する預金債権を対象として死因贈与契約を締結し、その死後、受贈者が、払戻を求めた裁判で、受贈者の請求が棄却された事例があります(東京地方裁判所令和3年8月17日)。

論拠としては、金融機関と預金者(贈与者)との間で締結している預金契約に締結されている「債権譲渡禁止特約」が当該死因贈与にも適用されるからというものです。
(なお、遺言による遺贈については、遺言者の遺言という単独行為によってなされることから、債権譲渡契約ではないため、債権譲渡禁止特約の適用を受けないとされています。)

金融機関が死因贈与契約よる預金の払戻を拒む背景には、払戻に応じた後、死因贈与契約の有効性が否定されるなど、相続人との間でトラブルとなり、過誤払い(二重払い)のリスクを避ける狙いがあります。

金融機関によって対応方針はまちまちなようで、実際には、死因贈与契約によって支払に応じる金融機関も過去にはありました。
しかし、上記裁判例を踏まえて、今後、金融機関が死因贈与契約について、法定相続人全員の同意或いは相続人全員との間で死因贈与契約の有効性を確認することを求める等対応を執ってくることが想定されます。
このため、確実性を期すためには、預金債権を相続人・第三者へ渡す希望がある場合には、遺言によって、作成するが望ましいと考えます。

文責:弁護士小泉英之

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